FIV陽性の猫について


FIV( feline immunodeficiency virus)って聞いたことがありますか。

日本語では猫後天性免疫不全症候群というのが正式な病名で、俗に「猫エイズ」と言われています。保護活動をやっていると必ずといっていいほど、この問題にぶちあたります。

これはヒトや他の動物種にうつる病気ではありません。

FIVウィルスに感染した猫はFIV陽性(キャリア)となるわけですが、陽性だからといって必ずしも病気を発症するわけではなく、体内にウィルスを持ちながら無症状のまま寿命を全うする猫もいるし、ドイツやオーストラリアの疫学調査からも、FIV陽性ネコと陰性ネコの平均寿命に有意差は確認できないという報告もあります。つまり、FIV陽性だから寿命が短いとは言い切れないということです。

ではなぜ、FIV陽性が問題になるかというと、

  1. イメージや固定観念による偏見があり、家族募集に苦戦しがち
  2. 他の猫への感染のリスクがある(感染力は高くはありません)

上記の理由から、保護した子がFIV陽性だと、「出てしまったかー」となるわけです。

しかしながら、他の猫への感染のリスクについては、激しいケンカをしない限り、感染の率はとても低いことがわかっています。

さらに近年、新しい報告がありましたのでここでご紹介しようと思います。

2014年8月のThe Veterinary Journal のFIVの感染に関する記事です。FIVの感染の研究が2つのシェルターで行わました。陽性の猫と陰性の猫を隔離することなく同居させた結果、感染が確認できなかったことが報告されています。

FIV陽性と陰性の猫が同居する保護施設におけるFIV感染について

       翻訳: 渡辺 夏織(Kaori Watanabe)

上記は要約なので、詳細はわかりにくいかもしれませんが、わかりやすく結論のみをかいつまむと、FIV陽性の猫と陰性の猫が同居している2つの保護施設で陰性の猫が陽性に感染していたかどうかを調べた結果、感染していなかった、ということです。
ただし、咬傷を伴う激しいケンカはなかったようです。

「FIV陽性の猫と陰性の猫と一緒に暮らしているけれど、感染していないし発症もせずに長生きしています!」
そんなお声もた~くさん耳にします。

発症しないためには、なによりストレスの無い生活が大切です。

保護施設は猫や人の出入りが多いので、どうしても猫たちにとってはストレスになりがちですので、ほんとうは真っ先にキャリアの子から家族が決まっていって欲しいのですが、実際にはその逆で、どの保護施設でも長く残ってしまうキャリアの子は多いのです。

「猫と暮らすなら家族のいない保護猫を迎え入れたい・・・」と思ってくださったのなら、譲渡されにくい子たちも選択肢に、その子たちのパーソナリティな魅力にもっと目を向けていただけたら嬉しいです。